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Dyckia(ディッキア)の植え替え

 

 

 

はじめに

「植え替え」は植物を長く育成する上で、必ず通る過程だと思います。

 

しかし、ひとえに「植え替え」と言っても、植物毎にその方法や注意点は異なります。

 

植え替えた直後に水をやるもの、やらないもの。

根を整理するもの、しないもの。

鉢底に石を敷くもの、敷かないもの。

 

些細な違いの様に思えますが、植物にとってはそれは大きな違いの様です。

 

私も植物を育て始めた頃は、良くわからないまま植え替えを行い、結果枯らしてしまった、という苦い経験があります…。

 

この記事では、ディッキアの植え替えに関してその手順や注意点をまとめています。

 

単に植え替える手順を記載するのではなく「なぜその過程を行うのか」という理由に関してもそれぞれ言及しているため、少し長く感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

「結論だけを知りたい」という方は記事の最後に手順をまとめたものを記載していますので、そちらをご覧ください。

 

ただ個人的には理由知った上で行うのとそうでないのとでは、育成結果に歴然とした差が出ると思います。

 

そして何より「なんとなく育てる」のではなく、「こういう意図で育てる」という育成方法の方が断然面白いです!

 

理屈通りいかないのが植物育成ですが、理屈を知れば納得できる事も多く、知識があれば自身の育成環境にあった育て方をより的確に見つける事ができます。

 

少し面倒かもしれませんが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 

植え替え時期(季節)

ディッキアの植え替えは時期として春~秋にかけて行うのが基本となります。

 

理由としては、植え替えを行う過程で多少なりとも株に負担がかかる為です。

※なるべく負担を軽減する植え替え方法を紹介していきますが、植え替えにより株に多少のダメージを与えてしまうのは致し方ありません。

 

ディッキアの成長期に植え替えを行うことで、根の回復を早め、立て直しを図ることができます。

休眠期である冬場の根にダメージを与えてしまうと、回復や立て直しが行えず、株にかなりの負担がかかってしまうことになります。

 

ディッキアは剛健な植物なので、冬場に植え替えを行うことで枯れてしまったり、という最悪の事態はあまり発生しにくいですが、それでもなるべく避けた方が無難です。

 

おススメは平均気温が20℃程度になった早い時期での植え替えです。

 

成長期を長い期間設けることができる為、多少調子を崩した株でも葉が展開し、美しい姿に作り込む事ができます。

 

タイミング(ディッキア)

上記したように、植え替えはディッキアに負担をかけるものとなりますので、株の状態を見ながら行う事が大切です。

※調子が悪い状態の時に植え替えを行うと、更に悪化させてしまう場合もありますので注意が必要です。

 

植え替えをどのタイミングで行うかは、育成目的(大きくしたい・締めて育てたい)や、株の成長速度に左右されますが、最低2年に一度は植え替えを行うと健康に育ちます。

 

※用土の状態を加味すると、できれば1年に一度は植え替えを行うのがより好ましいです。

 用土は基本粒上のものを使用しますが、時間とともに用土が劣化し、粒が潰れていきます。用土の隙間がなくなると、根が呼吸できず、上手く機能しなくなる恐れがあります。

 

目的

育成面での植え替えの目的は、

 

①鉢増し

→株のサイズに合わせて、鉢のサイズを上げる目的。

②根の整理

→鉢の中の根が詰まり過ぎてしまうと根が上手く水や酸素を取り込むことができなくなってしまうため、根の整理を行う目的。

③用土の入れ替え

→劣化した用土を新しものに入れ替える目的。

 

この3つが主な目的となります。

 

 

植え替え手順

 

▶準備

基本的な準備物は以下。

 

・ディッキア

・用土

・鉢

・スコップ(筒状のものがベスト)

※手袋

※鉢底石

※鉢底ネット

※化粧土

 

※のものは必ず必要ではありません。

 

 

▶鉢の下準備

鉢底の穴にネットをひきます。

 

鉢底石があればネットをひく必要がない、という方も入らっしゃいますが、鉢底石の隙間から用土が落ちる事もある為、ネットは引くことをおススメします。

 

 

ネットの上に鉢底石、または用土を鉢の上に敷きます。

※鉢底に敷く鉢底石・用土の厚さは鉢の3分の1程度。

 

私は鉢底石は敷く場合と敷かない場合があります。

判断基準は以下2点。

 

①鉢の容量

株のサイズに対し用土が多いと判断した場合、用土の量を減らす意図で鉢底石を敷きます。

しかし、鉢の容量が株のサイズより少ないか適量の場合は、鉢底石ではなく直接用土を敷きます。

 

②株のサイズ

株のサイズが小さい場合、早く葉を展開させる為、根張りや水持ちを良くする意図で直接用土を敷きます。

株のサイズが大きい場合(直径15cm以上)、成長ではなく締めて育てる意図で水はけを助長する鉢底石を敷きます。

 

鉢底石の役割としては、

①鉢底からの通気性を確保する

②水はけを確保する

の主に二つ。

 

ディッキアの特性は「水を好む植物」なので、水はけは過剰に気にする必要はありません。

また、私は使用している用土で通気性や水はけの調整をしているため、鉢底石での水はけ調整はさほど重要視していません。

特に3号~4号(直径9cm~12cm)のディッキアは葉を展開させ、形を作る事を目的としているため、鉢底石ではなく根の張り易い用土をより多く鉢の中に入れ込みます。

 

 

▶ディッキアを鉢から抜く

ディッキアを鉢から抜く際に「根鉢」と言われる鉢の中にギッチリと根が詰まった状態だと、鉢から株が抜けない、という状況があります。

その時は、鉢を横から叩き(振動させ)、株と鉢の隙間から土を徐々に落として下さい。

 

※鉢の中の用土が湿っていると、土が中々落ちない為、植え替えをする際は鉢の中の水分がない状況が好ましいです。

※また、鉢の中の用土が湿っており根が絡んでいる状態だと、根が土に引っ張られ切れてしまう事があります。根を痛めると葉の調子も悪くなるため、水やりを行った直後の植え替えはなるべく避けるようにして下さい。

 

根に絡まった用土は無理に落とし切る必要はありません。

振ったら自然と落ちる程度で十分です。

 

根の整理が目的の際は必要のない根を切る事もありますが、基本的には根はあまり触らない事を心がけて下さい。

根の状態は葉の状態に直結する為、触らずなるべくそのまま植え付ける、という方法がベストです。

 

また、根に日光が長時間当たる事でダメージを受けることもあります。

通常根は土の中にあり、日が直接当たらない状態ですので、直射日光は避け、曇りの日や日陰で植え替えを行って下さい。

※上記の理由により、植え替えにかける時間もなるべく短い方が好ましいです。

 

 

▶位置取り

ディッキアを植え付ける位置にセットし、軽く指で固定します。

 

 

▶用土を入れる

株と鉢の隙間から用土を流し込みます。

※化粧土を敷く場合は、鉢の縁から1cmほど余裕を持った量を流し込みます。

 

鉢の側面を軽く叩きながら用土を流し込むと、適度に隙間に用土を入れ込む事ができます。

 

 

株の根本が埋まる程度の位置まで用土を入れるようにすると、株が上手く固定できます。

 

※サイズの大きいディッキアの場合「下葉が株元より下に伸びており、鉢の中に入りきらない」という状況があります。

その場合は「下葉を埋める」または「下葉を切る」かのどちらかの対処法になります。

下葉を切ると、そこから雑菌が入る可能性があるので、埋める方法がより安全です。

 

 

▶化粧土を敷く

化粧土を敷きます。

粒が小さい化粧土は水やりの際に浮くことがあるので、なるべく厚めに(1cm~2cm)敷くようにします。

 

 

▶水やり

植え付けが完了したら、水やりを行います。

鉢底から勢いよく水が流れ出す量を与えて下さい。

 

植え替え直後の水やりにより、微塵などの余分な用土を流し出します。

鉢底から色のついた水が流れ出しますので、無色になるまで水を与えて下さい。

 

▶植え替え後の管理

植え替え直後は株に負担がかかっている状態の為、一週間程度は明るい日陰で管理するのが無難です。

成長点(ディッキアの葉が集まっている中心点)が動いていることが確認できれば、直射日光に当てて頂いても問題ありません。

 

※ディッキアは剛健な植物のため、植え替え後の管理に神経質になる必要はありません。

「結構な量の根を切ってしまった」という場合でない限りは、成長点の確認は通常管理後でも問題ありません。

 

 

植え替え手順まとめ

①ディッキアを鉢から抜く

②鉢底ネットを敷いた鉢に鉢底石、または用土を3/1程度敷く。

③ディッキアをセットし、用土を流し込む。

④水やりを行う。(鉢底から流れ出す水が無色になるまで)

⑤数日間、明るい日陰で管理し、様子を見て直射日光に切り替える。

 

最後に

ディッキアに限らず、植え替えは植物の育成において大きな楽しみの一つだと思います。

 

今まで「そうでもないな」と思っていた植物が、植え替えると「あれ?かっこよくないか?」と思う事も多分にしてあります。

 

最近では「育成過程において必要だから」という理由ではなく「植え付けたい鉢があるから」という理由で植え替えを行う方も多いかと思います。

 

植え替えは植物に負担をかけるので「その理由は如何なものか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的には全然アリです。

※勿論、株の状態を見て植え替えの可不可を判断する事は前提ですが。

 

気に入った鉢に植え付ければ、よりその植物を見る時間が増え、変化や成長に気付きが生まれます。

変化に対応した育成方法を模索したり、成長を喜んだりする事が、結果その植物に愛着を湧かせ、大切に育てる事に繋がります。

 

植物育成は長期的に行うものなので、肩ひじ張らず、楽しんで頂ければ幸いです。

 

関連情報

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ビザールプランツと呼ばれる珍奇植物を中心テーマに植物用品をデザイン・制作するクリエイターチーム。"人の手で生み出す造形"をコンセプトにプラスチック鉢や陶器鉢、シルクスクリーン、刺繍ポスターなどを商品展開。Dyckia・Agave・Caudex・Euphorbia・Cactus・Bonsai…。多種多様な美しい造形をした植物のある暮らしをデザインする。それが私たちの仕事です。

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