++ 草冠 x D.I.P. Collaboration

はじめに
D.I.P.のコラボレーション企画として行っている草冠(くさかんむり)とのプロダクト制作。
コラボレーション企画のきっかけはD.I.P.からのアプローチでした。
2021年、D.I.P.としてのボタニカルプロダクト制作をスタートした際、Instagramにて草冠の作品を目にすることがありました。
その独特の造形や世界観に一目で魅了され「ぜひコラボレーションを!」と、お声掛けをさせて頂いたのがそのはじまり。
ただ、草冠のブランド立ち上げ初期ということもあり「今は自身の作品に向き合って進めていきたい」とのご意向で、残念ながらその段階での実現はしませんでした。

それからも草冠の作品を眺めては、どんどんと進化していく造形やセンスに大きな刺激を受けていました。
そして約1年後、草冠より「少し落ち着いてきたので、詳しくお話を聞きたい」とお声掛けを頂きました。
いちファンとして草冠の作品を追っていた自分としては、驚いたやら嬉しいやら。
そうやってスタートした今回のコラボレーション企画。
草冠とのコラボレーション・プロダクトをより楽しんで頂く為、この記事では草冠のデザイナーである山口氏の経歴や造形の由来を紹介させて頂きます。
草冠の作り出す独自の世界観。
無機質であり、しかしどこか生物的でもあるその不思議な造形は一体どこからきたものなのか?
読んで頂けましたら草冠の作品を更に一段、深く楽しんで頂ける記事内容となっております。
ぜひ最後までお付き合い下さい。

About 草冠
まず初めに草冠の簡単なプロフィールは下記となります。
ブランド:草冠 Instagram:https://www.instagram.com/_.kusakanmuri._/ デザイナー:山口 渉太郎(やまぐち しょうたろう) 年齢:26歳 出身:神奈川 場所:東京在住 |
「草冠」は山口氏が立ち上げ、プロダクトの制作を行っているボタニカル・ブランド。
山口氏は学生の頃は多摩美術大学の建築学科で学んでいたそうです。
そのまま建築の道に進むことをしなかった理由は、
「建築は好きだけど、一人で完結させることができない。デザインから実際の制作まで、できれば自分一人で全て済ませたかったから」
との事。
大学を卒業してからはフリーター期間が2年ほどあり、その間は絵やデザイン画を描きながら「自分が本当にやりたい事」を探していたそうです。
何かを作りたい。
そういった衝動のような強い気持ちはあったようですが、では「何を作ればいいのか」が漠然としており、その2年間はとにかく興味が湧いたものは手当たり次第、といった様子だったそう。
歴史的なゴシックやルネサンス、バロックからなる造形や様式美。
そして現代としての古代やファンタジー映画、ゲームの世界観。
それらの世界観や空間を構成する「要素」を作りたい。
そう考えていたときに出会ったのが「鉢」というプロダクトだったようです。

プロダクト制作コンセプト
山口氏が草冠として制作するプロダクトである「鉢」。
コンセプトイメージとしてあるものは歴史的な背景と新しさを感じさせる、言ってしまえばファンタジーゲームの中に登場する古代遺跡のような世界観。
伝説の剣が古びた台座に刺さっている情景。
そこには積み上げられた時間や技術を感じ、しかし現代の感覚にそぐわない不思議で心地の良い違和感が同時に存在する。
矛盾する要素が混在する、そんな世界観を「鉢」として再現したい、というのがその根底にあるようです。
プロダクトとして落とし込む為に、そこから更に突き詰め整理を行い、
大枠の造形を「遺跡」「建築」。
プロダクトが持つ精神性としては「玉座」。
という形でそれぞれコンセプトを定め、作品の制作を開始。
いくつもの試作を経て、正式に「草冠」としての活動を開始したのは2022年の1月の事でした。

「草冠」という名前は上記した「玉座」から連想した言葉だそう。
実際、草冠がリリースするプロダクトは、正にそういった建築知識や一貫したコンセプトの裏打ちを感じさせるデザインとなっています。
無機質なコンクリートの質感であるにも関わらず、人間味を感じさせる装飾的な外見。
本来自然の中にあるべき植物を鉢に植え付ける人のエゴや、それゆえ作り出される美しさ。
植物が鎮座するに相応しい、清濁入り混じった「玉座」を見事に鉢として落とし込んだ「鉢」であると感じます。

鉢の制作手法
草冠でリリースされる鉢のデザインは全て3Dデータによるもの。
デザインされたデータは3Dプリンターによって成形が行われ、それを原形として型作りを行い、コンクリートを流し込み鉢として完成させる。
現在では草冠として金属や陶器での鉢の制作も行っている山口氏ですが、一番初めに選んだ素材がコンクリートだったのは、
「経年劣化やその質感も含め、草冠が求める世界観の再現に相応しい素材であると判断したから」
だそうです。

「原形を基に型を作り、原材料を流し込み成形する」という流れはD.I.P.の鉢の制作にも類似する点が多くあります。
一番の違いは原形をデータで作っている点。
D.I.P.では原形制作は全て陶器で行いますが、上記したように草冠では全てデータによって原形の制作作業が行われています。
鉢を制作する上で、山口氏の最も好きな作業は「形をデザインする」事。
デザインを考える時間を多く割く為、そして頭の中のものを具現化する上でより精密に細部を再現する為、3Dモデルという手段を選択することとなったそうです。
「効率を求め、新しい技術を使うという点において臆することがない」という山口氏の姿勢は、草冠のプロダクト制作において大きなポイントとなっているように感じます。
例えば上記した陶器での鉢の制作。

陶器の素材としての可能性や、釉薬の使用による表現の幅の拡張を動機に制作に着手したとの事ですが、陶器の制作自体は驚くべきことに全て独学での習得。
釉薬の調合や陶器の焼成、鋳込みの手法、それら全てを誰に教わる事無く自分で調べ考え、機材や原料を購入し作品の制作を行うその精神性と行動力には脱帽します。
「次はガラスにチャレンジしたい」
そう楽しそうに語る山口氏。
いちファンとして、草冠の今後のクリエイションが楽しみでなりません。

最後に
草冠の山口氏に「鉢を使って頂く方に何か伝えたい事はあるか?」と聞くと、
「思い描く理想の世界観を作るために、誰かが自分の鉢を使ってくれたら嬉しい」
と答え、その後少し間を置いてから「とにかく楽しんで欲しい」と付け加えられました。
同じく鉢のデザインや制作を行っている自分としては、山口氏の言葉には非常に共感するところがあります。
園芸の主役は植物。
ただ、ファッションがそうであるように「何を着るのか」という事でその印象は大きく変わります。
大切な想い入れのある、これから自分だけの価値を積み上げていく植物と鉢で成る世界観。
それを作り上げる上で、自身のデザインした鉢を手に取って頂き、更に楽しんで頂けたら、作り手としてこんなに嬉しいことはありません。
草冠の山口氏にお話を聞き、鉢はただの植物を植え付ける為のパーツではなく、そこに理念や意図がデザインされたプロダクトだからこそ面白いのだと、そう改めて感じました。
それぞれの想いが乗った今回のコラボレーション鉢が、皆様のビザールプランツ・ライフをより一層充実させる要素となれば幸いです。

D.I.P.|Botanical Products Creation Crew
Botanical Products Creation Crew
JPN.FUKUOKA | since 2021.
ビザールプランツと呼ばれる珍奇植物を中心テーマに植物用品をデザイン・制作するクリエイターチーム。"人の手で生み出す造形"をコンセプトにプラスチック鉢や陶器鉢、シルクスクリーン、刺繍ポスターなどを商品展開。Dyckia・Agave・Caudex・Euphorbia・Cactus・Bonsai…。多種多様な美しい造形をした植物のある暮らしをデザインする。それが私たちの仕事です。
屋号 | D.I.P. |
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住所 |
〒815-0042 福岡県福岡市南区若久3-8-4 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 不定休 |
代表者名 | 志方 優輝 |
info@dipfukuoka.com |