D.I.P.

美原 良 × D.I.P. Collaboration!!

 

はじめに

この度、陶芸家様とのコラボレーション第二弾として、美原 良氏とのコラボレーションが実現致しました!

 

陶芸家様の作品をD.I.P.の独自製法により新たにプラスチック鉢として作成するこのプロジェクト。

 

第一弾である小野瀬一氏に関しての記事「小野瀬一×D.I.P. Collaboration!!」でも記載させて頂きましたが、陶芸に宿る「不完全性の美」に憧れ続けてきたD.I.P.としては胸躍る、ドキドキするようなコラボレーションとなっております。

 

今回の記事では「美原 良」という陶芸家に関して、その経歴や陶器鉢を作るに至った経緯、デザイン性への拘り等々をまとめさせて頂いております。

 

昔、陶芸家へのインタビューでこのような話を聞いた事があります。

 

ある記者が有名な陶芸家様のお宅へ伺い、作陶風景をインタビューしていた時のこと。

 

作品に釉薬(ゆうやく)をかける作業である施釉(せゆう)を有名陶芸家が行っているのを見て、インタビュアーはこう言ったそうです。

 

「施釉は5秒くらいで済ませちゃうものなんですね」

 

それを聞いた有名陶芸家はこう答えたそうです。

 

「違う。30年と5秒だ」

 

聞いた話なので、実際にこのやり取りが行われたのか、その実は分かりませんが、私はこのストーリーが大好きです。

 

手に取れる小さな作品。

 

その作品には年月や想い、技術や拘りが積み重なっており、そうして成り立っています。

 

その積み重なりが作品の厚みとなり、得も言えぬ存在感を醸し出すのだと思います。

 

口造りや高台、畳付きの処理や釉薬の質感など、目で見て手に取って伝わる作家の作品への拘りも確かにあります。

 

「背中で語る」という言葉のように「作家は作品で語る」のが粋であり、もしかするとこうやって記事にするのは実は野暮な事なのかもしれません。

 

ただ、作家様から様々なお話を聞かせて頂き、言葉や文章でなければ伝わらない背景やストーリーがあると私は強く感じております。

 

作品に込められたストーリーを知ることで、その作品に対しての見え方が変わってくる。

 

人間関係にも似通っているその面白さは、作品の一つの楽しみ方としてアリだと思います。

 

遠回りで少し大げさな言い方になってしまったかもしれませんが、要は

 

「大好きな作品を皆様により深く知って頂き、一緒に楽しみたい!」

 

という想いで、この記事を書かせて頂いてます、という事です。

 

読んで頂ければ、美原氏の作品を今後より楽しんで頂ける記事となっていますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 

 

陶芸家になるまでの経緯

【プロフィール】

美原 良(みはら りょう)

出身 : 千葉県

作陶を開始した年 : 2000年~

工房場所 : 千葉県

 

美原氏が陶芸を始めたきっかけは、地元の陶芸教室の前を通りがかった事でした。

 

轆轤(ろくろ)による作陶に興味が湧き、思い立ってからその翌日には陶芸教室へ入会されたそうです。

 

元々陶芸に対し興味があった、という訳ではなく、その陶芸教室の前を通りがかった瞬間「やってみたい!」という感情が湧き、衝動的に陶芸を始められたそうです。

 

陶芸教室の入会者は、そのほとんどが年配の方ばかり。

 

そのような中で、美原氏の陶芸は始まりました。

 

作陶を開始して、頭に想い描く作品をとにかく作っていたのかと思いきや、初めの一年は何も作ることなく、とにかく轆轤(ろくろ)の前に座り、轆轤(ろくろ)を回して形を作っては壊しを繰り返していたそうです。

 

時々作った作品を焼く事もあったそうですが、その数は年にたった一つか二つ。

 

陶芸に興味津々で入会して来た若者がまともに陶器作品を作らず、ひたすら作っては壊しを繰り返すその姿を見て、周囲の方はさぞ不思議に思われていたことでしょう。笑

 

 

そういった日々が一年程過ぎ、自分で納得のできるものを形作る技術が身についてきたと感じた美原氏は食器類(湯呑や皿)を作陶し始めます。

 

それから、6年程月日が経ち、2017年に地元で開催されるイベントで作陶した食器類を出品するようになります。

 

そのイベントへの参加が、美原氏が植木鉢を作るきっかけとなりました。

 

農園リゾートで開催されたそのイベントで、敷地内にある園芸店がたまたま目に入り、陶器鉢の作陶を思いついたそうです。

 

そして翌年、同イベント参加時に作陶した植木鉢を出品。

 

その時に、美原氏の鉢を気に入ったお客様が、その鉢に植える植物を敷地内にある園芸店で探しにいく、という出来事がありました。

 

自分が作陶した鉢をきっかけに、植物に興味を持って頂けた。

 

この出来事が美原氏に取って印象深く、また非常に喜ばしい事だったそうです。

 

美原氏はそのイベントでの出来事を大きなきっかけとして、本格的に植木鉢の作陶を開始する事となりました。

 

その時の気持ちは私も非常によく分かります。

 

私は植物(特にビザールプランツ)が好きで、その上でD.I.P.にて鉢を作り始めました。

 

植物が好きで鉢に興味を持って頂けることは勿論嬉しいのですが、自身の作成した鉢をきっかけとして植物に興味を持って頂けるのは、作り手としては心の底から嬉しいものなのです。

 

自己満足だけでなく、自分の作ったもので他の誰かが喜んでくれる。

 

作家様によって作品を作る上でのモチベーションは様々でしょうが、誰かに喜んで頂けることが、創作の大きな原動力になる事は間違いないと思います。

 

 

スタッズデザインに関して

【1】デザイン経緯

美原氏のアイコンである、亀裂とスタッズを併せたデザイン。

 

そのデザインのきっかけとなったのは、Instagramだったそうです。

 

元々、ガラス質のコーティングである釉薬(ゆうやく)を使用する事による陶器の色味ではなく、立体的な細工に興味があった美原氏でしたが、鉢のデザインを考える上でInstagramを通し、様々なデザインを参考にされたそうです。

 

その中で、鉢にスタッズを使用しているものを目にし、それを自身のデザインとして落とし込む事はできないかと試行錯誤を繰り返しました。

 

そうして生まれたのが、亀裂とスタッズの組み合わせ。

 

美原氏のスタッズ装飾は全て手彫りによって施されています。

 

亀裂部の荒い断面を残しつつ、規則的に並ぶスタッズ装飾。

 

現在その「亀裂とスタッズ」の装飾は大きく3種類に分けられています。

 

【2】デザイン種類

 

美原 良 × D.I.P. Collaboration Plants Pot「遠雷」

 

①遠雷(えんらい)

鉢の中心部に(鉢底の高台部分の隙間。水が出る隙間が星の形となった部分がデザインの中心)、上部から亀裂とスタッズの装飾が雷が落ちるように下に伸びているデザイン。

 

美原 良 × D.I.P. Collaboration Plants Pot「狼煙」

 

②狼煙(のろし)

鉢の中心部に、下部から亀裂とスタッズが狼煙が上るように伸びているデザイン。

 

画像の左上が「烈」の施された作品。

 

③烈(れつ)

鉢の下部のみに、亀裂とスタッズが掘ってあるデザイン。

 

 

美原氏の作品は全て手作業により一点一点丁寧に装飾が彫り込まれています。

 

その手彫りによる微細な質感を出す為に、あえて釉薬(ゆうやく)は使用していません。

 

また、同じコンセプトのデザインでも装飾時に微妙な違いを出しているそうです。

 

植物と同様に、全て一点もの。

 

更に、美原氏の作品は見る角度によって受ける印象が異なる為、長く楽しめる、飽きの来ないデザインとなっています。

 

美原 良 × D.I.P. Collaboration Plants Pot「遠雷」

 

コラボレーションに関して

美原氏が試行錯誤の末に行きついた現在の「亀裂とスタッズ」のデザイン鉢。

 

現在D.I.P.では「遠雷」と「狼煙」のモデルをプラスチックとして作成させて頂いております。

 

美原氏にとって、今回のD.I.P.とのコレボレーションに関してお話をお伺いしましたので、Q&A方式で紹介させて頂こうと思います。

 

Q : 自身の作品をプラスチックにする事に対して、抵抗はありませんでしたか?

 

A : 全くなかったですね。

 

小野瀬さんの鉢の再限度を見て「すごいな」と思っていました。

 

「ぜひ自分の作品も作ってみたい!」という想いがあったので、お話を頂いた時は嬉しかったです。

 

Q : 実際にプラスチックになった自身の鉢を手にした時の印象はどうでしたか?

 

A : びっくりしました。

 

本当に完璧な再現度で完成されていて…。

 

これは持ってみないとプラスチックだと分からないと思います。

 

自分の作品のコピーが出来上がった様で嬉しかったです。

 

手に取って頂いたお客様の反応も良くて、沢山の方に喜んで頂いていたので、それもすごく嬉しかったです。

 

Q : これからの作家活動に関しては、どのように進められますか?

 

A : まずはスタッズのデザインを探求していこうと思っています。

 

それと同時に「立体感」に拘りながら、様々なデザインを試していこうと思っています。

 

 

最後に

話を伺うと、美原氏はInstagramなどを通して、様々な作家様に影響を受け、それを自分の中に落とし込むという手法で作品を創作してきたようです。

 

ゼロから一を生み出す手法というより、一を二に、二を三に、二と三を掛け合わせて六に、という形で新しい作品を生み出していく手法。

 

それは「陶芸作品の技法をプラスチックに落とし込む」というD.I.P.の作品コンセプトに共通した考えであると感じました。

 

D.I.P.ではこれまで、多くの方々のご助力があり、プラスチックや陶器、植物を含め様々なプロダクトを皆様に提案させて頂いてきました。

 

その中には決して自分の頭の中だけを探っていては生まれなかったであろうものも多く含まれています。

 

D.I.P.のプロダクトを手にして頂く方々や、植物を扱っている業者様、小野瀬氏や美原氏のような陶芸作家様、Ishiotoko氏の様なアーティスト。

 

その様な素晴らしい方々と共に、これからも自分自身が「ドキドキする!」「イカしてる!」と言えるプロダクトを生み出していければ、これ以上の幸せな事はないと心より思っております。

 

 

D.I.P.|Botanical Products Creation Crew

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Botanical Products Creation Crew
JPN.FUKUOKA | since 2021.

ビザールプランツと呼ばれる珍奇植物を中心テーマに植物用品をデザイン・制作するクリエイターチーム。"人の手で生み出す造形"をコンセプトにプラスチック鉢や陶器鉢、シルクスクリーン、刺繍ポスターなどを商品展開。Dyckia・Agave・Caudex・Euphorbia・Cactus・Bonsai…。多種多様な美しい造形をした植物のある暮らしをデザインする。それが私たちの仕事です。

屋号 D.I.P.
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